2011年3月に発生した東日本大震災をきっかけに、日本国内では省エネ社会を推進するべく様々な施策が検討・実施されています。
スマートハウスの普及についても重要な施策の一つとして位置づけられていますが、いくつかの課題が残されています。そのため、経済産業省を中心にスマートハウスに関連した施策が検討されていますが、その際に重要な役割を担っているのがスマートハウス標準化検討会です。
本記事では、スマートハウス標準化検討会とはどのような会で、どのような施策が検討されているのか、ご紹介します。
ここ最近よく聞く、スマートハウス。本日の議題も、スマートハウスに関してですが、スマートハウスについてどこまで理解できていますか?まずは、スマートハウスについて簡単におさらいをしておきたいと思います。
スマートハウスとは、一般的にHEMSを導入して電気管理をしている住宅を意味しています。様々な機器をネットワークで繋げ、すべてを管理できます。スマートハウスに使われる機器としては、大きく分けて3つに分類されます。
・HEMS
HEMSとは、Home Energy Management Systemの略称であり、家庭で使うエネルギー管理システムのことです。役割としては、自宅の家電と接続し消費電力をモニターで確認できるようにしたり、家電の自動制御をしたりできます。接続できる機器は、蓄電池、照明器具、電気自動車、エコキュート、エアコンなど、家庭にある電気製品なら問題ありません。今では、スマートフォンと接続することで、消費電力や電気代の確認をすることもできるようになりました。今後も活用の幅はより広がっていくでしょう。
・スマートメーター
HEMSで集めたデータを表示する役目を担っているのがスマートメーターです。主な機能としては、30分ごとに消費電力を計測し、電気の見える化ができます。どの時間帯にどの程度の電気を使っているか一目でわかるため、それぞれの家庭に応じた最適な電気料金プランを選ぶことができます。また、自動検針ができるようになりました。今までは、毎月決まった日にちに担当者が、電気の使用量を計測しに自宅に来ていたと思いますが、これからは立ち合いの必要性がなくなります。
また、新しくスマートメーターに取り替える場合は、工事費用は一切発生しません。その理由は、スマートメーターは会社管理になっているためです。しかも、メンテナンスまで行ってくれますので、アナログの検針器を使っていても安心です。
・スマート家電
スマート家電とは、ネットワークを介してスマートフォンなどと接続できる家電のことです。最近では、この手の家電が徐々に増えて来ました。例えば、エアコンで言えば、いつでもどこからでも電源のオンとオフをスマートフォンでコントロールできます。夏の暑い時期は、家についたらその暑さにすぐに冷房をつけますよね?スマート家電なら、家につく10分前にスマートフォンから操作すれば、家に着いた頃には部屋は涼しくなっています。今、このようなスマートフォンから操作できるスマート家電が増えているんです。エアコンだけではなく、冷蔵庫、洗濯機、炊飯器など活用の幅はどんどん広がっています。
・小型風力発電システム
一般化ではほとんど見ませんが、企業で風力発電を試験的に導入していることがあります。小型なので、投資も大きくはかからず騒音なども気になりません。
・太陽光発電システム
近年、家を建てる時にはどの家にも太陽光発電システムがついているのを目にします。太陽光パネルを屋根につけて、発電した電気を家で使う、もしくは売電できるシステムです。それに加え、蓄電池システムを導入し、発電した電気をためておく人もいます。
・エネファーム
テレビのCMでよく耳にするようになりましたが、仕組みがわかっていない人も多いのではないでしょうか。エネファームとは燃料電池とコージェネレーションを合わせもった機器です。コージェネレーションとは、発電をした時にでる熱を他に用途に使うことで、エネファームは熱でお湯を沸かしています。
・家庭用蓄電池
蓄電池は、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、NAS電池などの種類に大きく分けられます。
鉛蓄電池は、鉛を使った蓄電池であり、値段が安く安定した電力供給ができるメリットがある反面、硫酸や鉛を使っているため安全面での不安があります。
ニッケル水素電池は、水酸化ニッケルを使った蓄電池です。過充電などに強く耐久性があります。
リチウムイオン電池は、鉛電池、ニッケル水素電池などに比べてエネルギー密度が高く、小型で軽量なところが特徴です。また、寿命が長く、様々なシーンで活用されています。
NAS電池は、リチウム電池を上回る高エネルギー密度が特徴で、軽量で大容量な蓄電池です。寿命も長く、産業用の蓄電池として活用されています。
・EV
EVは、電気自動車のことを意味しています。なぜ、ここにEVがあるかというと、EVも蓄電池をベースに動いているからです。まだまだ日本では普及していませんが、アメリカではTESLAという電気自動車メーカーが徐々に勢力を拡大しています。燃料電池の値段も大量生産で安く抑え、今まで値段が高かった電気自動車に手が届く値段になってきました。
・PHV
PHVはプラグインハイブリットと呼ばれる車です。ガソリンを入れて走ることもできれば、充電もできるので電気自動車としての側面も持っています。災害時などには、携帯電話などをつないで充電などができます。
スマートハウス標準化検討会とは、経済産業省のもとに立ち上がった検討会であり、スマートハウス関連技術の標準化策定を目的に活動が続けられています。
スマートハウス関連技術には様々な要素がありますが、とりわけ重要である要素が「HEMS」と呼ばれるエネルギー管理システムと、「スマートメーター」と呼ばれる電力量計です。
HEMSとスマートメーターの機能によって家庭内の電気使用が最適化され、さらに電気使用量の明細が目に見えて確認できるようになります。さらに、これまで月1回の目視による電気使用量確認が、スマートメーターの機能により30分ごとの自動検針になるため、よりきめ細かな電力運用が可能になります。
しかし、HEMSやスマートメーターが機能するためには、HEMSとスマートメーターの接続、その他スマートハウス関連機器が相互に接続が可能であることが必要です。そして、接続するためには通信方式が共通化されていることが不可欠となります。通信方式が共通化した機器を接続することで、より多彩な節電機能を持ったスマートハウスが生まれるわけです。
一般に、通信方式等を共通化することを「標準化」と言います。スマートハウス標準化検討会では、スマートハウスにおける通信方式の標準化を推進する施策が検討されているわけです。
今一度、スマートハウス関連の通信方式標準化の背景を確認してみます。経済産業省の資料によれば、スマートハウスにおける標準化の必要性について、現状を反映して以下のように記載されています。
・需要家が電力等使用情報のデータを円滑に把握できない
→スマートメーターからデータを取得することで「見える化」や「制御」による節電・省エネの実現・HEMSと他社機器との接続が不可能
→異なるメーカー間の機器の相互接続が可能になるとともに、多様な節電サービスが展開可能に・独自規格を持つ大企業しかスマートハウス市場に参画できない
→中小企業・ベンチャー等の新規事業者の参入が容易に
(引用:経済産業省『JSCA国際標準化WGスマートハウス標準化検討会とりまとめの公表』平成24年2月24日)
ここでも、電気使用量の見える化と電気制御の自動化が主眼として挙げられており、さらに、通信方式を標準化することによりスマートハウス関連市場へ新規参入事業者が増え、その結果、同市場の活性化が期待されていることが分かります。
スマートハウスに関する通信方式にはいくつかの規格があり、海外では日本と異なった規格が採用されています。
たとえば、米国ではSEP2.0(Smart Energy Profile2.0)と呼ばれる通信規格が策定されており、欧州ではKNX(KONNEX)と呼ばれる規格が認証されています。一方、日本では、ECHONET Lite(エコーネットライト)と呼ばれる日本独自の通信規格が2011年12月に採用されました。
それぞれの規格には特徴がありますが、ECHONET Liteには多様な機器を制御できるというメリットがあり、そのため家庭用途のエネルギー管理システムとして適していると考えられています。
このように、日本では独自の通信規格が定められていますが、スマートハウス標準化検討会では、今後はSEP2.0やKNXとの連携も可能になるように検討が進められています。
省エネ社会の要となるスマートハウス。太陽光発電システムや蓄電池そしてHEMSを備えた住宅には、標準化された通信規格が必要であることがご理解頂けたかと思います。
日本ではECHONET Liteがスマートハウスの通信規格として採用されていますが、スマートハウス標準化検討会の今後の動向により、やがて米国や欧州が採用した規格との連携も可能になり、より多彩な省エネサービスが生まれてくることが期待でるでしょう。
(参考)
経済産業省「JSCA国際標準化WGスマートハウス標準化検討会とりまとめの公表」
2017/05/22