前回の前編では、HEMSの価格帯、HEMSに対する補助金の現状を見てきました。
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今回はその続きで、過去のHEMS補助金の事例、地方自治体の補助金事例について見ていきましょう。
それでは、これまでのHEMSの補助金はどのように交付されているのか参考までに確認してみましょう。
HEMS機器に対する補助金の交付は、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)によって行われてきました。そして、SIIが指定するHEMS機器のみに対して補助金が交付され、その対象機器はSIIのホームページ上に掲載されていました。
平成23年度と平成25年度の例を見てみます。
[平成23年度の例]
補助金額は上限で10万円、申請の受付期間は平成24年4月19日から平成26年3月31日まで、予算額に達した時点で受付終了です。
[平成25年度の例]
補助金額は定率1/3で、上限が7万円、申請の受付期間は平成26年3月17日から平成26年9月30日まで、こちらも予算額に達した時点で受付終了です。
以上のように、HEMSに対する補助金制度は総じてリチウムイオン蓄電池の補助金交付と類似していることが分かります。
その他、応募条件として、補助対象の機器であっても、補助対象機器登録日、そして申請受付開始日より前の購入、契約、設置された場合は補助の対象外になると記載されています。つまり、申請をおこなってから購入しなければいけないということです。
すでにHEMSを導入しており、それに対して補助金をもらうことはできません。対象機器も指定されており、パナソニック、トヨタディアサービス、日本産業、大和ハウス、東芝ライテックなどから選ばなければいけません。型番まで決まっているので、次回補助金の申請を行う時には購入する機器が補助金の対象になっているか確認が必要です。ちなみに、最低限の条件として、検定付電力計(スマートメータとHEMS機器を繋ぐための付属機器を含む)を備えたHEMS機器が対象になると書かれています。
HEMSに対する今後の国からの補助金交付については詳細がまだ判明していませんが、これまでの手続きと極端に大きく違うことはないと思われます。過去の実績から、補助金の水準等をご参考頂ければと思います。
HEMS機器への補助金は、地方自治体によっても交付されるケースがあります。お住まいの自治体によって補助金額等が異なりますが、ここでは福岡市の例を見てみたいと思います。
福岡市の場合は、「平成28年度福岡市住宅用エネルギーシステム導入補助」としてHEMS導入に対する補助金の交付を受け付けていました。(平成29年1月31日に募集終了しています)
[補助金額]
HEMS機器費の1/3(ただし上限は5万円)
[申請受付期間]
平成28年6月1日〜平成29年1月31日まで。予算額1億6,125万円に達した時点で終了。
[必要書類](既築住宅の場合)
・補助金交付申請書
・同意書
・設置場所付近の地図
・住宅の現況写真
・工事・売買契約書の写し
・申請者の住民票
・建物の登記簿謄本
【分譲共同住宅に設置する場合】
・管理組合の規約の写し
・管理組合総会で対象システム設置について議決されたことを示す書面
福岡市の例は以上ですが、他の自治体のHEMS補助金についても、条件や補助金水準に大きな違いはないでしょう。なお、国からの補助金も受けられる場合は、自治体の補助金と合わせることで経済的負担をさらに軽減することも可能です。
金沢市は、地球温暖化対策として省エネの推進を目指し、住宅用エネルギーマネイジメントシステム(HEMS)の設置に対して平成28年は、補助金を交付していました。交付金額は、設置費の4分の1を支払うというものです。限度額は2万円です。
・補助金の交付は1住宅につき1回限り
・市の予算の範囲内での交付
・国、県の補助金と併用して交付をうけることができます。
・太陽光発電システム設置に対する市の補助金との併用はできません。
・対象設備を設置した2年間は、電気使用量等の報告義務があります。
これ以外にも、申請条件はたくさんあります。例えば、太陽光発電システムの最大出力が2キロワット必要です。エコーネットライトによる空調、照明等の電力使用量を調整するための制御機能を有していること、エコーネットライトを標準的なインターフェースとして搭載していること、など本当に多くの条件があります。
成田市では、省エネ設備の普及促進やCO2削減のため、住宅エネルギー管理システム(HEMS)を設置した成田市民に対して、補助金を出しています。申請期間は、平成25年10月1日〜平成31年3月末までです。市の予算範囲内での支給となると書かれていますので、予算が無くなり次第終了になります。補助金額は上限1万円です。算出方法は以下の通りです。
補助金額=設備の購入費+設備の工事費-消費税と地方消費税-国からの補助金
市内の住宅に未使用のHEMS機器を設置した人、もしくは未使用のHEMSがついた住宅を購入した人。また、以下の条件を満たしている必要があります。
・住宅の所在地に住民登録していること
・市税を滞納していないこと
・住宅を自分が所有していない場合は、小勇者の設置の承諾を受けていること
・平成25年10月1日以降に工事請負契約または住宅の売買契約を締結して、平成31年3月20日までに設置を完了していること
住宅で使用する電力・ガス等の使用状況を一元的に管理し,居住者の快適性の確保及びエネルギーを効率的に使用することを目的した以下の1~5の要件を全て満たす設備が対象です。
1:機器の制御に係る装置が一般社団法人エコーネットコンソーシアムの定めるECHONET Lite規格の認証を取得しているもの
2:専用モニター等により、電力使用量を表示できるもの
3:住宅全体の電力使用量を30分間隔以内で計測し、1時間以内の単位で1ヶ月以上、1日以内の単位で13ヶ月以上蓄積できるもの
4:分岐回路単位の電力使用量、部屋単位の電力使用量、電気機器単位の電力使用量のいずれかを30分間隔以内で計測し、1時間以内の単位で1ヶ月以上、1日以内の単位で13ヶ月以上蓄積できるもの
5:一つ以上の設備又は電気機器に対して、自動制御や遠隔制御等、電力使用を調整するための制御機能を有するもの
※平成25年10月以降に国が実施していた補助事業の対象となっていたものは、引き続き補助対象となります。
今まで国と地方の補助金をご紹介してきました。どちらも積極的にHEMSの導入を後押ししようとしているのがわかります。ここまで力を入れるのには、HEMSが消費電力をコントロールし、無駄なCO2の排出を抑制することにつながると信じているからです。
また、個人にとっても電力の見える化で、エネルギーの最適化や各電化製品の自動制御などが可能となります。これから間違いなく普及していく設備であり、今後はスマートハウスという括りだけではなく、車もその一部に加わるでしょう。EVやPHVは、電気を充電して走りますが、蓄電池を搭載しているため、電気を供給することもできます。このように、連携できるプロダクトが徐々に増えていくでしょう。
国から給付されるHEMSの補助金交付の具体的手続きはまだ明らかにされていませんが、過去の補助金交付の経緯と、経済産業省が発表した情報によれば、今後詳細が発表される可能性があります。HEMSの補助金をご検討の場合は、よりスムーズに申請が行えるよう、過去の申請書類や自治体の申請方法などをご参考頂くことも有益だと思われます。
・福岡市ウェブサイト「平成28年度福岡市住宅用エネルギーシステム導入補助」募集について」
http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/53601/1/panfuretto_H28.pdf
・一般社団法人環境共創イニシアチブウェブサイト
https://sii.or.jp/hems/
・成田市ウェブサイト「エネルギー管理システム(HEMS)機器設置補助金の概要
https://www.city.narita.chiba.jp/sisei/sosiki/kankei/hems.html
・金沢市ウェブサイト「住宅用エネルギーマネジメトシステム(HEMS)設置費補助制度のご案内
http://www4.city.kanazawa.lg.jp/data/open/cnt/3/19596/1/hemschirashi.pdf
2017/05/16