再生可能エネルギーを推進する日本において、太陽電池は非常に重要な装置です。
そのため、国による補助金制度等の政策的な後押しが行われ、近年では産業、家庭ともに太陽光電池を導入するケースも増えてきました。
このように普及に弾みがつき始めた太陽電池ですが、幾つかの種類があることはご存知でしょうか?
太陽電池の種類によって特徴が異なり、それぞれメリットやデメリットがあります。
そこで本記事では、太陽電池が電気を生み出す仕組みとともに、その仕組みで活用される半導体の種類についてご紹介いたします。
太陽電池に光が当たると、なぜ電気が得られるのでしょうか?その秘密は、「光電効果」にあります。
光が物質に当たると、物質中の電子が光のエネルギーを吸収する現象が生じます。
そして、電子がエネルギーを吸収した後は周辺にエネルギーを放出し、場合によっては電子が外へ飛び出すことがあります。このように、エネルギーを含んだ電子が飛び出ることが、光電効果と呼ばれる現象です。
太陽電池に光が当たった場合は、エネルギーを含んだ電子が太陽電池の機能によって選択され、その電子を外部の電気回路へ向かわせます。
そして、電気回路に向かった電子はエネルギーを放出し、電力として活用されます。
このとき、エネルギーを含んだ電子を選別する働きをするものが、後述するシリコン系等で出来た半導体になります。
ソーラーパネルと太陽電池の違いをご存知ですか?実は、太陽電池を繋げたものがソーラーパネルと呼ばれています。一番小さな単位を「セル」、そして、次にモジュール、パネルと呼びます。一般家庭につけるものは、ソーラーパネルと呼ばれています。最近では、空き地に設置する大規模なソーラーパネルをメガソーラーと呼ぶこともあります。
次に、シリコン系をはじめとした様々な種類の太陽電池をご紹介します。
シリコン素材を使用した太陽電池で、国内で最も普及している種類になります。
シリコン系はエネルギー変換効率の高さがメリットです。
ただし、他の種類と比較すれば高コストであことがデメリットとなります。
シリコン系はさらに、以下の種類に分けられます。
古くから活用されてきたタイプです。技術的な信頼性が高く、変換効率が20%前後と最も優れたものになります。
ただし、シリコンの使用量が多いため、コストが高くなることは避けられません。
また、高温下では期待する変換効率が得られないこともありますので、使用環境によって能力が異なります。
セルの中に、たくさんの小さなシリコン結晶がはいっています。
変換後逸は単結晶よりも劣ってしまいますが、その分、シリコンの使用量が少ないためコストは割安になります。価格がお手頃で、性能もいいため、多くの太陽光パネルで使用されています。その代わり、変換効率が単結晶よりも若干劣ります。
薄く製作することが可能で、また高温化でも機能劣化しません。
シリコンの使用量をできるだけ抑えているため、単結晶と比較すると割安ですが、逆に変換効率は劣ります。また、発電量が少ないこともデメリットです。
単結晶とアモルファスを組み合わせた種類で、高温化に強く変換効率も比較的高めです。理想的なハイブリッドシリコンです。
ただし、コストは割高になります。日本で販売しているのは、パナソニックや長州産業です。
無機化合物を利用した太陽電池です。
無機化合物として銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se)等が主に使用されます。
それぞれの3元素頭文字を取ってCIS太陽電池と表現されることもあります。
その他、ガリウム(Ga)を追加して4元素から成るCISG太陽電池も出てきています。
化合物系太陽電池の特徴は、シリコン系高温状態の中でも変換効率が落ちること無く、また割安であることです。そのため、少し曇っていても安定した発電量が期待できることから、シリコンの代わりとして期待されています。
エネルギー変換効率自体はシリコン系より劣りますが、近年では様々な原料との組み合わせで変換効率向上を目指しています。製造に使う原料にも特別なものはないため、量産向きです。
例えば、上記に挙げた元素以外にも、下記のものが存在します。
ガリウム(Ga)、ヒ素(As)を利用した太陽電池です。高い変換効率を誇りますが、化合物系よりも高コストです。人工衛星等で活用されることが多いタイプです。
カドミニウム(Cd)、テルル(Te)を活用した太陽電池で、コストを抑えながら変換効率を上げることができます。ただし、カドミニウムの毒性が懸念されているため、現在、日本国内では製造されていません。CdTe太陽電池の大部分はアメリカ製となっています。
主に炭素を用いた種類の太陽電池です。
薄くて、柔軟性があるため、屋上のみならず、壁面にも設置が可能です。太陽電池を着色できたり、製造コストが低くなったり今後の実用化に胸が膨らみます。
この種類の太陽電池は変換効率に問題があり改善の余地があるものの、近年では東京大学が開発したフレキシブルCNT有機薄膜太陽電池のように経済性、柔軟性、変換効率ともに優れた太陽電池が実現できる見通しとなりました。窓ガラスに貼り付けたり、車のボンネットを太陽電池作ったりと使用用途は広がりを見せるでしょう。
現在、最も有望視されている種類の太陽電池と言えます。
太陽電池の発電方法についてわかったところで、次に太陽光発電のメリットとデメリットをご紹介します。
太陽光発電は、再生可能エネルギーと呼ばれています。再生可能エネルギーとは、永遠に何度でも使えるエネルギーのことです。その逆の意味として石油や石炭を使ったエネルギーを化石燃料と呼びます。太陽光発電は、再生可能エネルギーの中で、もっとも普及している発電方式です。他にも、風力発電、水力発電、地熱発電など様々な技術が日々進化していますが、太陽光よりも普及している発電方法はありません。
これら再生可能エネルギーに共通していえることは、二酸化炭素や、排ガスなど環境を汚染する物質を排出しないということです。環境に優しく、持続的な社会を形成して行く上で、今後必ず必要となるエネルギーになるでしょう。
再生可能エネルギーは、環境に優しい反面、安定供給が難しいことが問題です。太陽光発電に関していえば、雨の日や夜など太陽が出ていない時間帯は発電することができません。これは、太陽光発電だけではなく、水力発電や風力発電にも言えることです。
せっかく導入したのに使えないのはもったいないということで、蓄電池を一緒に導入する人が増えています。蓄電池とは、発電した電力を溜めておくことができる電池のことです。
太陽光の場合、曇りや深夜帯にも昼間に溜めた電気を使うことができるので、再生可能エネルギーを効率的に使えます。技術の進化もあり、再生可能エネルギーのデメリットをカバーする製品も徐々に開発されています。これからさらに、新しい技術開発が進み、再生可能エネルギーは身近な存在になってくるでしょう。
国税庁によると太陽光や風力発電向けに購入した設備は、法定耐年数17年とされています。つまり、減価償却をする際は、17年でしなければいけないのです。しかし、パネルに使われている蓄電池の寿命はそこまで長くありません。蓄電池は別途変える必要があるでしょう。
今後再生可能エネルギーの利用は、さらに普及していくでしょう。太陽電池に関していえば、現在シリコン系が主流ですが、今後さらに新しい技術が期待されています。例えば、窓ガラスに貼ることができる太陽光パネルなど、世界中でその技術開発は加速しています。
太陽電池はこれから開発が進みさらに新しいものが出てくる中、まだまだ課題を抱えています。例えば、結晶系であれば、セルの薄さを薄くしたり、サイズの大型化をしたりすることがあげられます。また、薄膜系については、コストダウンに取り組んでいかなければいけません。より効率のいい太陽光の普及をさせるためには、高い価格がネックです。一貫生産のため、生産効率をあげ歩留まりの改善をしていく必要があります。また、大面積、薄膜の均一化など技術面での向上も今後取り組む必要があります。
一言で太陽電池と言っても、複数種類あることがご理解頂けたかと思います。
現在はシリコン系太陽電池が主流ですが、有機系の技術革新も進んでおり、エネルギー効率と経済性を兼ね備え、そして応用性にも優れた太陽電池が生まれることも夢ではありません。
太陽電池のそれぞれの種類を適材適所で活用することにより、再生可能エネルギーを中心としたエネルギー社会が推進されていくことが期待されます。
これから新しい技術が生まれ、再生可能エネルギーが安定して大容量の供給ができるようになれば、化石燃料に頼る必要のない生活を送ることができるようになるでしょう。そのためにも、再生可能エネルギーを積極的に使い、技術開発にお金が回るようにしていくことが、今後一人ひとりが意識的に行動していかなければいけないことかもしれません。
参考
経済産業省 資源エネルギー庁ホームページ
http://www.enecho.meti.go.jp
2017/09/01