出典 http://www.asahi.com/eco/news/TKY201202140551.html
地球内部の熱をエネルギー源とする地熱発電は、持続可能なエネルギー社会を実現するエネルギーとして、他の再生可能エネルギーと同様に大きく期待が持たれています。また、再生可能エネルギーであり、発電の際にCO2の排出がほぼないため地球温暖化への影響が少なく、環境にも優しいことでも注目されています。
地熱から発生する水蒸気でタービンを回し、タービンの回転力で電気を得るシンプルな発電方式になりますが、電気が得られるまでには様々な仕組みが機能しています。
今回は、地熱発電をより深く理解するため、地熱発電の仕組みについてご紹介したいと思います。
地熱発電は、火力発電におけるボイラーと同様に、熱を水蒸気に変換する仕組みを活用します。
地熱発電においてボイラーに相当するものが、地熱貯留層と呼ばれる地中の層です。地熱貯留層とは高温高圧の水・蒸気が留まった層で、近隣マグマで熱さられたものになります。そもそも地熱発電におけるその資源は、地熱地帯の地下深く(地下およそ1000から3000mのところ)に存在している、マグマによって高温になっている深層部分です。これを地熱流体といいます。つまりはこの地熱流体がたまっているところを地熱貯留層と呼んでいるということです。
その近隣マグマは「マグマ溜まり」と呼ばれており、地表から数km〜十数kmの地下に存在し、その温度は800℃〜1000℃と言われています。
熱せられる地中の水分の元は、地表から長年に渡って地下へ浸透してきた雨水や河川の一部です。その浸透してきた水分がマグマ溜まり付近に到達し、加熱された水分が熱水や蒸気に変化して岩石の層に留まり、地熱貯留層を形成するわけです。
地熱貯留層のエネルギー源を取り出すには生産井(専用の井戸)を掘り、そこから高温高圧の熱水と蒸気を取り出します。そして、地熱発電所の気水分離器と呼ばれる装置で熱水と蒸気に分離します。
分離した蒸気を活用して蒸気タービンを回転させ、電気が生み出されます。熱水の方は、別途設けた還元井と呼ばれる井戸を通して地下深くに戻されます。
発電に使用した蒸気はその後、復水器の冷却水で凝縮され、凝縮された温水は冷却塔へ送られます。冷却塔に届いた温水は更に低温化して蒸発冷却され、タービンの回転を効率化させる冷却水として再活用されます。
地熱発電所では主にこのような機構が働き、効率よく発電出来るようになっています。
地熱発電の形式にはいくつかあり、熱源の存在する地域の特性(蒸気と熱水の割合、温度等)によって形式が選択されます。
主に採用される形式はシングルフラッシュをはじめとし、その他にダブルフラッシュ、バイナリー方式等が挙げられます。それぞれの形式の特徴は以下の通りです。
日本国内では主要な方式です。本記事で解説した地熱発電になります。
シングルフラッシュの仕組みで分離された熱水を再活用する方式です。分離された熱水を減圧することで低圧の蒸気を生成し、発電に活用します。シングルフラッシュよりも出力が増えるというメリットがありますが、その分、発電設備が複雑になりコストも上がります。地熱流体が高温で高圧の際に利用されることが多いです。ちなみにニュージーランドにはトリプルフラッシュ式の発電所もあるそうです。
取り出した熱水や蒸気の温度が低い場合に最適な方式です。低温状態であれば蒸気の力が弱いためタービンをうまく回転させることが出来ません。
そこで、蒸気を別の方面に活用することで発電を促します。具体的には、気水分離器で分離された熱水が予熱器に送られ、蒸気の方は蒸発器へ送られます。
次に、予熱器と蒸発器を活用して水より沸点の低い媒体(アンモニア、ペンタン、フロン等)を加熱し、タービンを回して電気を生みだします。
以上の他に、高温岩体発電と呼ばれる形式もありますが、現時点では研究段階となっています。高温岩体発電では、地下に存在する高温の岩体へ地上から注入し、蒸気を発生させて活用する仕組みになります。地下に水分が足りなくても地熱を活用する発想から生まれた方式です。
地熱発電では、専用の井戸で地中のエネルギー源を採取し、蒸気を上手く活用して発電していることがご理解頂けたかと思います。
季節や時間に左右されない安定した電力供給ができることから、今後のエネルギー社会にとって貴重な発電方式とも言えます。実際に地熱発電は認定されている設備容量も大きく、年間を通して設備利用率を高く保つことができるため、平均的な設備利用率は80パーセントとも言われています。設備利用率80パーセントで発電所が稼動した場合、年間の発電量はなんとおよそ36億kWh。これは一般家庭およそ100万世帯ぶんの年間消費電力量をカバーできる電力量です。
生産井や還元井等の井戸を掘ることから周辺地域に影響を与える等の課題が指摘されていますが、半永久的に活用できる純国産エネルギー源としても期待されています。
2017/02/13