2011年3月に発生した東日本大震災をきっかけに、日本の電力事情がにわかに変化してきました。
震災の影響による原子力発電所の停止を受けて、いつ停電が起こるかわからない不安が私たち意識に生まれはじめ、さらに、世の中に節電の機運が高まりました。
そのような状況を反映して、次第に注目を浴びてきたのが蓄電システムです。今回の記事では、その蓄電システムについてご紹介します。
蓄電システムとは、電気を蓄えることができ、必要に応じてその電気を利用できるシステムのことを言います。
運用上の基本的な仕組みとして、別途導入した太陽光発電等と組み合わせて利用する方法があります。太陽光発電を主にした再生可能エネルギーの弱点といえば、電気を使いたい時に必ず発電できるわけではないということが大きいです。
太陽光発電で言えば、天候に大きく左右されてしまうため、雨天時や夜間は発電を行うことができません。また、太陽光発電システムだけでは、生み出した電力を貯めておくことができません。これは非常にもったいないです。
しかし、蓄電システムと発電を合わせて使うことによってそれらの弱点はカバーすることができます。蓄電システムと太陽光等の発電システムを兼ね備えることによって日中に電気を生み出し、その電気の一部(余剰電力等)を蓄電池に蓄えます。
そして、太陽光等の発電が行われていない時に、蓄電池に蓄えた電気を取り出して利用します。夜間でも停電の際でも活用できます。
あるいは、電気代の安い夜間プランの時間帯に電気を蓄え、そして蓄えた電気を日中から夕方の時間帯に利用して日々の電気代を節約することもできます。
蓄電システムには家庭用と産業用があり、両者の違いは主に蓄電できる容量になります。蓄電池の大きさは様々ですが家庭用のものであれば、室内にも置けるほどのコンパクトなサイズが最近では発売されています。
蓄電システムのメリットは、上記にも少し触れましたが、停電時でも電気が使えるようになることから、非常用の電源として大いに活用できることです。したがって、夜間に停電が発生しても部屋の明かりをつけることができ、冷蔵庫やテレビも継続して使用することができます。もちろん、携帯電話やスマートフォンの充電も可能です。
また、電力会社が提供する電気代プランには割安な夜間プランが用意されています。そこで、夜間の時間帯に蓄電システムを利用して電気を貯めておき、昼間にその電気を活用することで従来よりも電気代をより安くすることができます。
蓄電池に蓄えられた電気を使用できる時間は、蓄電池の性能にもよりますが、家庭用の場合は430Wh(テレビ、冷蔵庫、照明、PCなど情報機器)を連続使用して、12時間前後のものが多くあるようです。したがって、非常用として活用する場合も十分であると言えます。
さらに、日中の電力利用のピークカット時に夜間に蓄えた電力を利用することによって電力会社からの電力供給を抑えることができます。
およそ20万戸がこれを行うことによって火力発電1基分、およそ50万戸で原子力発電1基分の電力発電量に相当するそうです。CO2排出量削減に貢献することができるため、蓄電システムは環境にもやさしいと言えますね。
このように、蓄電システムとは非常時の電源と節約を兼ね備えるすぐれたシステムであることが分かります。
以上で見たように蓄電システムには電気使用に関する大きなメリットがあり、そのため広く注目を集めるようになってきました。それでは、蓄電システムは今後も関心を持たれ続けるのでしょうか。
今後もより一層、蓄電システムの活用が見込まれると思われます。その理由のひとつとして、2012年にスタートした固定価格買取制度が挙げられます。
固定価格買取制度は、太陽光などの再生可能エネルギーによって生み出された電力を、一定価格で一定期間、電力会社に売電できる制度です。
この制度を活用することにより、太陽光発電システムを導入した家庭や事業所に経済的なメリットが生まれやすくなります。
そして、太陽光発電システムと蓄電システムを導入することで電力をさらに有効活用できることから、蓄電システムの需要は高まっていくと思われます。
また、2016年の電力小売の全面自由化によって売電先も多様化するようになり、それに伴い蓄電システムの需要が活況となる可能性があります。
蓄電システムとは、電気を貯めて必要なときに活用できる優れたシステムです。太陽光発電システムと組み合わせることで、経済的にも非常時用の電源としても大きな恩恵を受けることができるでしょう。
蓄電池にも様々な性能があり、それに伴い価格帯も様々です。蓄電システムをご検討の際に、今回の記事でその概要とメリットをご理解して頂ければ幸いです。
2016/11/07