再生可能エネルギーの固定価格買取制度がスタートし、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーの普及に弾みがつきましたが、九州電力等による新規の接続申し込みの保留など、いくつかの問題点を残しました。そこで、同制度で浮き彫りになった問題点を是正すべく固定価格買取制度の見直しの動きが出始め、2014年12月19日に経済産業省主導によるパブリックコメント(※)が開始されました。
(※)パブリックコメントとは、国の公的機関が政策を実施するため、それに伴い政令や省令などの規則や命令を定めようとした際に、事前にその案を公表し、国民から意見や質問を受け、その結果を政令や省令などの制定の際に反映させることを目的とした制度となっています。
今回は、そのパブリックコメントで触れられている制度見直しの方向性について、太陽光発電事業者の立場から特に重要と思われる部分を確認してみたいと思います。
認定発電設備の仕様変更をする場合は、従来よりも厳格化される見通しになりました。
従来は、認定発電設備の出力10kW以上で、さらに20%以上が変更になる場合は変更認定されていましたが、2015年2月以降の申請分に対しては、出力変更の全てが認定対象になります。この変更に関しては、太陽光のみならず全電源が対象となります。
同じく2015年2月以降の申請分について、太陽電池の基本仕様変更において、太陽電池メーカー、種類、変換効率、型式番号などの変更も変更認定の対象となります。
さらに、太陽光発電事業を行う場合は、パワーコンディショナー(※)や通信・カレンダー機能付きの制御指示器など、時間単位で出力制御するための設備を導入することが義務付けられました。
(※)パワーコンディショナーとは、太陽光発電システムで発電された電気を家庭等で利用できるよう変換する機器です。
従来の制度化では、買い取り価格が決まるタイミングは「接続申込」の時点になっています。また、買い取り価格は1年ごとに見直され、そして価格が引き下げられています。そのため、年度末に価格が下がる前に申請し、設備建設に関わるコストが低下するまで着工を先延ばしにするやり方も目立ってきました。一般に「空押さえ」と呼ばれる方法です。
申し込みを行った(接続枠を確保した)にもかかわらず設備建設着工に至っていない状態は、本来の再生可能エネルギーの普及とは異なる実態となり、制度見直し案で対応すべき件として扱われていました。
そこで接続枠空押さえ防止策として、接続枠の確保を「接続申込」より後の「接続契約」の段階とし、もし発電事業者が接続契約して1ヶ月以内に工事費負担金を支払わなかったり、また、運転予定日に至っても設備を稼働させなかったりした場合は、電力会社にて契約解除が出来るようにし、発電事業がそれに同意しない場合は電力会社側で接続拒否を行えることとされました。
また、運転開始前に設備仕様に変更があれば、変更認定時点の価格が適用される見通しです。具体的には発電出力の変更や、太陽電池メーカーや種類の変更、変換効率を低くする変更の場合に適用されます。(ただし変更認定時の価格適用には例外ケースもあります)
メガソーラーを含む再生可能エネルギーによる発電事業については、地域住民の理解を得ながら自然環境等と調和をとりつつ、進めていくことが極めて重要です。自治体によっては、住民とのトラブルを懸念するなど、一定規模以上の発電設備の立地に当たって、協議を義務付ける動きがある一方で、地域活性化の観点から、太陽光発電等の立地を促進し普及を進める動きもあります。このように、再生可能エネルギーの導入については、各地域の実情を踏まえて適切なルールが策定されることが望ましく、経済産業省は、自然環境や地域の実情とバランスをとりつつ、再生可能エネルギーを推進していく観点から、必要な検討をおこなっていくこととなります。
調達価格等算定委員会の「平成24年度調達価格及び調達期間に関する意見」では、主として住宅用である10kW未満の区分について、「法の国会審議を踏まえ、以下の理由から、現行制度と同じく、余剰買取方式としました。余剰買取方式の場合、自己消費分を減少させることにより、太陽光発電の売電量が増やせるため、省エネルギーを促進する効果があります。余剰買取方式から全量買取方式に移行する場合、設定する価格を変えなければ、太陽光発電による発電量が増えないにも関わらず、賦課金負担が増えることとなります。
余剰買取方式の場合、売電分が6割という前提で計算され、現在42円/kWhという調達価格になっていますが、全量買取方式の場合、発電分を100%売電する前提で価格設定を行うため、調達価格が下がる(試算値で、34円/kWhまで)こととなり、消費者にとって、導入のディスインセンティブになるおそれがあります。全量買取方式の場合、全発電量がいったん電力系統に逆潮流してくるため、太陽光発電による発電量が同じままでも、電力系統への負担は増えることとなります。このため、系統整備費用が増加するとされています。 調達価格については、この意見が尊重されています。
総合エネルギー調査会新エネルギー小委員会系統ワーキンググループでは、自然変動電源の無補償の出力制御は年間上限30日を前提として、電力会社の接続可能量を検証しているため、自然変動電源の接続量が接続可能量を超過する場合は、1)超過前に接続した自然変動電源は、年間上限の30日まで無補償の出力制御がなされ、2)超過後に接続する自然変動電源は、住宅用太陽光発電であったとしても、年間30日を超える無補償の出力制御を行わなければ、電気の供給が需要を上回ることとなってしまうため、接続できないことになります。
このため、住宅用太陽光発電を含めて、超過後に接続する自然変動電源が接続できるよう、出力制御の 対象を500kW未満の設備にも拡大した上で、ア)無補償の出力制御の年間上限30日を撤廃し、イ)出力制御に必要な機器の設置等を行うことを条件に、接続を可能とする措置を講じています。
なお、住宅用太陽光発電は、個々の設備容量としては小さいですが、例えば、九州電力管内では、平成26年11月末に認定量が50万kWを超え、中型の火力発電所に匹敵する容量となっており、今後も導入が進むことを考慮すると、新規の住宅用太陽光発電も出力制御を行わなければ、電気の安定供給が維持できない可能性があるため、出力制御の対象としています。
調達価格の決定時期を「接続契約締結時」に変更すると、電力会社が調達価格の決定時期を決める権限を有することになる可能性があります。対策として、接続契約の締結が円滑に行われるよう、電力会社に対し、契約プロセスの見直しや工事費負担金の透明性の確保等が要請されています。また、発電事業者に調達価格の予見可能性を与える観点から、発電事業者の責によらず、接続契約申込みの受領の翌日から270日を経過した日までに接続契約に至っていない旨の電力会社からの証明がある場合、270日を経過した日の調達価格が適用されます。
調達価格等算定委員会の「平成27年度調達価格及び調達期間に関する意見」では、「固定価格買取制度開始前から存在している案件についても建設費用を確認したところ、発電規模が2,000kWを下回ると建設費が増加する傾向が確認された。」「2,000kW未満の未利用木質バイオマス発電設備について、調達価格に別途の区分を新たに設けることとし、この調達価格の想定値として、いいづなお山の第2発電所の資本費(62万円/kW)及び運転維持費(6.4万円/kW/年)、燃料費は9,000円/トンを採用することとした。」とされています。 調達価格については、この意見が元となっています。
経済産業省では、認定審査に当たって、調達期間にわたり安定的かつ効率的に再生可能エネルギー電気を発電することが可能であると見込まれるかを関係省庁への協議を行い、木質バイオマス資源の賦存量を見ながら、各事業者が必要な燃料を確保できることを確認しています。その結果、必要な燃料の確保が困難な場合は、調達計画を見直す必要がでるかもしれません。
以上で見たように、固定価格買取制度についてのパブリックコメントには、設備そのものに関する厳格化や空押さえ防止策など、発電事業にとって対応すべき案件がいくつも含まれています。また、パブリックコメントの意見募集概要を確認すると上記以外の見直し案も含まれており、今後の固定価格買取制度の方向性を示す重要なものとなっています。
ちなみにパブリックコメントについては「電子政府の情報窓口(http://www.e-gov.go.jp/)」で情報を確認することができます。パブリックコメント募集のお知らせや意見公募の実施結果を定期的にチェックすることによって、固定価格買取制度の具体的かつ最新の情報を知ることができます。
最近のパブリックコメント募集では、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法第18条第 2項ただし書の再生可能エネルギー電気卸供給約款以外の供給条件の承認に係る審 査基準(案)」についての意見公募が行われ、2件の意見が寄せられていました。2016年12月15日に資源エネルギー庁新エネルギー課からの回答とともに実施結果が公開されています。
参考:資源エネルギー庁『電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案等に関するパブリックコメントについて』平成26年12月
2017/04/10