毎月送られてくる電気料金の明細書に「賦課金」という名称の料金が記載されていることにお気づきでしょうか。
この賦課金というのは、電力会社が太陽光発電等による再生可能エネルギーを買い取る際に要したコストを補填するために、電気使用者の方々から回収しているものです。しかし、賦課金とは一体どのような料金でどのように計算されているか、分かりにくいことと思います。
そこで、今回の記事ではその賦課金について、その意味するところと算出方法などについて説明していきたいと思います。
まず、固定価格買取制度について説明します。固定価格買取制度は、再生可能エネルギーを使って発電された電気を、電力会社が一定期間、固定価格で買い取る制度です。日本は、火力発電にほとんどの電力を頼っているのが現状です。化石燃料を燃やして発電する火力発電は、原料の輸入に莫大な費用がかかるだけではなく、地球環境にも悪影響を及ぼします。そこで、政府は化石燃料からの脱却をするため、再生可能エネルギーを支援し、電力源を分散させようとしています。
現在対象となっている再生可能エネルギーは、太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス発電の合計5つです。このうちのどれか一つを設置する場合、固定価格買取制度の適応となります。すでに設備をつけている方については、残念ながら適応されません。発電された電気は、すべて買い取ってもらうことができますが、一般家庭の場合は例外があります。10kW未満の太陽光を使っている場合は、発電した分を家庭全体の電気に回し、余った分のみ売電できるようになっています。
それでは、それぞれの発電方法について簡単に説明させていただきます。
太陽光パネルで太陽光を電気に変換する発電方法です。太陽光は年間を通して降り注ぎ、永遠に枯渇することがないものです。日本の電力のほとんどを発電している火力発電は、化石エネルギーを使っていますが、将来的には枯渇することが予想されています。
太陽光を使えば、二酸化炭素も排出しないため環境に優しい電気を作ることができます。日本で1番普及の進んでいる太陽光発電ですが、それでもデメリットはあります。太陽が出ている時期や時間しか発電ができなかったり、最初に大きな投資が必要となったりするところです。特に費用面ではまだまだ高い傾向がありますので、需要と開発が進むことでさらに効率がよく値段の安い太陽光が出てくる可能性はあります。
高いところから水を落とすことで、水車を回して発電する方法です。水と落差がある場所があれば発電できるので、太陽光発電と同じように環境に優しい発電方法です。ただ、水力発電をするためにはダムを建設する必要があり、環境を変えてしまうことになります。また、水量によっても発電できる電力の量が異なりますので、雨の少ない時期は発電量が少なくなるデメリットもあります。日本では、環境破壊などの面から新しい大型のダムを建設することが難しため、普及する可能性は低いでしょう。
風力発電は、再生可能エネルギーの中でも太陽光と同じくらい環境に優しい発電方法と言われています。発電方法は、大きな風車を建設し風の力で風車を回します。水力発電が水で水車を回すように、風力発電は風の力を利用しています。風の力によって発電量が変わってくるため、海沿いなど風の強い地域に建設されます。
また、大型の風力発電機となればスペースや騒音の問題も出てくるため、空き地である必要があります。デメリットは、太陽光発電よりも多くあり常に稼働しているので、耐久性の問題や落雷、鳥などの衝突、機械音など解決しなければいけない問題はまだ山積みです。それでも、環境に優しいという理由で、日本中で徐々に導入が進んでいます。
バイオマスとは、生物由来の再生可能エネルギーのことを指しています。生物由来のため、発電所によって燃やすものはそれぞれですが、木材がよく使われます。木材を燃やし水蒸気でタービンを回し発電したり、木材を蒸し焼きにすることでガスを発生させ、そのガスでタービンを回す方法もあります。枯れた木や、動物の糞尿を使ったりするので、再生可能エネルギーとして認められています。しかし、木材は燃やした時に二酸化炭素が発生するので環境によくないのではと感じるのではないでしょうか。木材が枯れる前は木として二酸化炭素を吸収して酸素を排出していました。そのため、燃やした時に出る二酸化炭素と合わせればプラマイゼロとなります。二酸化炭素は増えなくとも、減らないという考え方です。
バイオマス発電は、コストが高いことが普及の足を引っ張っています。燃焼温度が低い木材は、発電の効率がよくありません。少ない電気を発電するために、多くの木材を使用しなければいけないということです。他の発電方法に比べ、まだまだコストがかかるため普及していないのが現状です。ただ、効率の部分が改善されれば、環境にも優しい発電方法です。これから発達していく可能性は高いでしょう。
このように、再生可能エネルギーはまだまだ課題を抱えています。しかし、化石燃料とは違い永遠に電気を発電できるメリットがあるため、国は力を入れて普及を目指しています。そして、その普及を目指すために賦課金が重要なのです。
賦課金とは、再生可能エネルギーの普及を推進するために電気利用者の方々に毎月の電気料金と合わせて負担してもらうためのものです。
固定価格買取制度では、太陽光発電などの発電事業者が生み出した再生可能エネルギーを、電力会社は固定価格で一定期間購入するよう義務付けられています。電力会社にとってはエネルギー購入分がコストになるため、電気利用者の方々は電気使用量に応じてそのコストに見合う金額を支払うことになります。なお、賦課金は定められた計算方法によって算出されます。そして、賦課金として回収された分は、最終的には再生可能エネルギーの発電事業者に還元される形になります。
以上の一連の仕組みによって、本来は事業リスクが高い太陽光発電等の発電事業に安定性をもたらし、その結果、日本において再生可能エネルギーの普及が見込めると考えられています。
したがって、電気利用者の方々が支払う電気代は次のようになります。
電力会社へ支払う電気代 = 従来の電気代 + 省エネ賦課金等
それでは、電気利用者の全員が支払う賦課金とはどのような計算に基づいて算出されるのでしょうか?
経済産業省資源エネルギー庁の公式ウェブサイトによれば、平成28年5月分(2016年度)から適用される賦課金等は以下の方法で算定されます。
「再生可能エネルギー発電促進賦課金」 = 使用した電気料 × 2.25/kWh
この「再生可能エネルギー発電促進賦課金」に加えて以前は「太陽光賦課金」というものを含めて「再エネ賦課金」としていましたが、こちらは26年度を持って廃止となり、現在は「再生可能エネルギー発電促進賦課金」のみとなっています。この廃止は太陽光発電の余剰電力買取の制度において「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」への移行が行われるとともに変更となりました。つまりは廃止というよりも統合されたということです。
この再エネ賦課金の額ですが、固定価格買取制度が始まった年である2012年度は0.22円であったため、2016年度の2.25円というのは、2012年度のおよそ10倍もの額となっています。2014年度は0.75円、2015年度は1.58円であったため、年々金額の値上げ幅は小さくなっているものの、今後も金額が上がることが予想されています。
ただ、固定価格買取制度の買取期間が10年から20年となっているため、先20年ほどは値上げが続きそうですが、その後は安定していくのではないでしょうか。
出典:経済産業省資源エネルギー庁ウェブサイト – なっとく!再生可能エネルギー > 固定価格買取制度 > 再エネ賦課金とは
今回の記事では、再生可能エネルギーの固定価格買取制度で定められた賦課金についてご紹介しました。
従来の電気代に加えて賦課金が加算されることにより月々の電気代が上昇し、そのため様々な疑問が持たれる方もいると思われます。しかし、電力会社が賦課金という形で回収できることで再生可能エネルギーを発電事業者から買い取ることが可能になり、発電事業者も固定価格で売電できることで安定した発電事業を運営することができるようになります。
電気利用者の方々にとっては負担になるものの、将来にわたって再生可能エネルギーの普及と育成を目指したものです。太陽光発電、風力発電、水力発電、バイオマス発電とまだまだデメリットもある発電方法ですが、今後化石燃料が枯渇することを考えると必ず必要となる発電方法です。今後のことも考えれば、賦課金は必要な制度です。
2017/04/13