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固定価格買取制度が浮き彫りにした問題点とは

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2012年からスタートした再生可能エネルギーの固定価格買取制度。

 

鳴り物入りでスタートしたこの制度の下で、国、発電事業者、電力会社、国民を巻き込んだ再生可能エネルギーの運用が始まったわけですが、やがていくつかの問題点が浮き彫りになってきました。そして、その問題点に対応するために制度見直しの動きが出始めるに至りました。

 

そこで今回の記事では、固定価格買取制度によって、主にどのような問題点が発生したのか、経緯を含めてまとめてみたいと思います。

 

 

電力会社による再生可能エネルギー買い取り中止

2012年に再生可能エネルギーの固定価格買取制度が始まり、太陽光発電等で得たエネルギーを、電力会社へ一定期間、固定価格で売電することが可能になりました。

 

ところが2014年に入り、九州電力が再生可能エネルギーの買い取りを中止するという報道が流れました。その後、九州電力の他に、北海道電力、沖縄電力、東北電力、四国電力が相次いで同様に買い取り中止を発表し世論を賑わせました。

 

ただし、ここで言われている買い取り中止とは、新規の買い取り契約を一時的に中断するということになり、従って保留の意味合いを持ちます。既に売電契約済みの場合は中断されません。

 

また、買い取りが中断されると言ってもその対象は限られており、沖縄電力以外の場合は大型太陽光発電設備(10kW以上や50kW以上)となっています。したがって、住宅用太陽光発電システムのような10kW未満の余剰電力を売電するタイプであれば、引き続いて受け付けられています。

 

それでも、新規売電契約が中断されることは、太陽光発電ビジネスへの参入を予定していた事業者にとって大きな問題点と言えるでしょう。

 

 

電力会社による買い取り中断の経緯

それでは、なぜ電力会社は買い取りの中断を決定したのでしょうか。中断を決定した電力会社によれば、その大きな理由は電力の安定供給に支障が出るからということのようです。

 

太陽光発電は、太陽光という自然のエネルギーを活用する以上、天気の状態に依存してしまうことは避けられず、そのため発電量が不安定になりがちです。

 

また、電力事業というのは、発電量(供給)と消費量(需要)が一致して初めて安定供給が可能となります(「同時同量の原則」と呼ばれます)。したがって、大規模な太陽光発電事業者の参入が急に増加すれば、不安定な再生可能エネルギー急増によって電気の需給バランスが崩れてしまい、同時同量の原則に則った運用が困難になります。

 

無理に運用を行えば設備の動作不良も引き起こしかねず、その結果、電力の送電が不安定になり大規模な停電も発生する可能性が懸念されました。

 

そこで、上記に挙げた電力会社では、そのようなリスクを回避すべく新規買い取りの中断を決定するに至りました。

 

中断に至ったその他の要因としては、電力会社が保有する設備の受け入れ能力が、急増した再生可能エネルギーの量に対応しきれなくなったことも挙げられます。

 

 

なぜ太陽光発電事業者の参入が増えたか

太陽光発電に関する買取価格は、毎年のように改定されています。平成24年には40円(+税)でしたが、翌年には36円に下げられ、その次の年には32円まで下がりました。このような状況を利用すべく、価格が引き下げられる直前には、高い価格帯で申請しようとする駆け込み申請が急に増えてしまいました。それが、太陽光発電事業者の参入が増えた大きな要因です。

 

また、買取価格が高額なタイミングで申請し、その後の実際の設備工事は、設備に関わるコストが下がった時に行おうとするケースも増えてきました。その結果、申請されているにもかかわらず、現実の設備が未だ存在しないという状況も発生してきました。

 

このように、申請が多くされているにもかかわらず現実には設備が未着工という状況が続けば、今後の再生可能エネルギーに関する制度そのものが破綻しかねません。国民に課せられる賦課金(再生可能エネルギー活用のために電力会社が回収する費用)も重くのしかかってしまいます。このことも、今回の固定価格買取制度で浮き彫りになった問題点と言えるでしょう。

問題点改善のために見直されつつある制度内容

上記の問題点を踏まえて、運用が始まってからおよそ2年後の2014年に見直し案が作成されました。それらの内容は、

 

  • 買取価格確定のタイミングの変更:買取価格決定のタイミングを「接続申込」ではなく、原則「接続契約」にすることで、契約するために設備建設着工の日程をあらかじめ明確にする。(流れを簡潔に説明すると、設備認定申請 → 接続申込 → 接続契約 → 設備建設 → 発電開始、となっています)
  • 「空押さえ」を防止する:予定通りに設備建設の着工が行われない場合に接続枠の契約解除も可能とする。
  • 価格の決定方法を見直す

 

などとなっています。また、こちらの見直し案をもとに改正案がすでに作られており、2017年より施行が予定されているとのことです。

 

そちらの改正案については経済産業省のホームページ上(http://www.meti.go.jp/press/2015/02/20160209002/20160209002-3.pdf)にて資料を確認することができます。

改正案が施行されることによって、せっかくの再生可能エネルギーを有効的に活用できるようになってほしいものですね。

 

まとめ

以上で見てきたように2012年にスタートした固定価格買取制度により、想定以上の太陽光発電設備の申請が急増し、そして電力需給バランスが崩れることの影響から複数の電力会社による買い取り中断の事態が発生しました。

 

また、申請しているにもかかわらず実際には設備着工に至っていないケースも散見され、当初企図されたものとはかけ離れた実態となっており、現行の再生可能エネルギー政策に疑問が持たれるようになりました。

 

このような問題点を改善すべく固定価格買取制度の見直し案も出されるようになり、今後は、再生可能エネルギーに関する事業運用がよりブラッシュアップされることが期待されます。

2016/12/14

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