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ドイツの事例に見る固定価格買取制度の変遷

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日本における再生可能エネルギーの固定価格買取制度(通称FIT)は2012年にスタートしましたが、それに先駆けてドイツでは既に同様の制度が導入されていました。そして、同国にて再生可能エネルギーの積極的活用が推進され続けました。

 

しかしドイツにおいても、固定価格買取制度の運用でいくつかの問題が浮上し、そして関連法の改正を経て2014年には大幅な見直しが行われました。

 

日本では固定価格買取制度がスタートしてそれほど年数が経っていませんが、先行事例であるドイツのケースを確認することで再生可能エネルギーの活用について多くの学びがあると思われます。そこで今回は、ドイツにおける固定価格買取制度について確認してみたいと思います。

 

 

ドイツにおける固定価格買取制度発足の経緯

ドイツの再生可能エネルギー政策は、1991年の

「再生可能エネルギーから生産した電力の公共系統への供給に関する法律」

が発端となります。この法律は、地球温暖化等の環境問題に対する1つの対応策として制定されたものになり、ドイツにおいて環境政策の中心的な役割を果たす法律とされました。この法律において、再生可能エネルギーの買い取り義務が初めて定められました。

 

そして、買い取り価格の水準も定められ、その結果、発電事業者にとって安定的な収益を見込めることから経営上のリスクも抑えられることになりました。その後、同法は1998年までに2度の改定が行われて次第にブラッシュアップされ、ドイツにおける再生可能エネルギーの普及に一役買いました。

 

その後、2001年には上記法律に変わる「再生可能エネルギー法(通称EEG法)」が制定され、再生可能エネルギーの普及率がさらに向上するよう目標が明確に定められました。また、この法律において、従来は変動していた買い取り価格が、20年間の固定価格へと変更になりました。
 
いわゆる、固定価格買取制度の導入です。固定価格となることで、再生可能エネルギーによる発電事業運営がより安定化される見通しになりました。同時に、買い取り価格の引き下げ率も明確に記載されました。

 

以降、再生可能エネルギー法は改正を繰り返し、2004年には再生可能エネルギー新法に改正され、ドイツにおいて再生可能エネルギーの普及がより一層推進されていきました。

 

 

ドイツで発生した固定価格買取制度の問題

上記のようにドイツでは再生可能エネルギーが普及しましたが、それに伴い、国民に課せられる賦課金の負担が重くなりました。経済産業省資源エネルギー庁の報告によれば、

2013年度のドイツの賦課金は平均家庭あたりで月1620円にも達している

と言われています。(出典:資源エネルギー庁ウェブサイト「 なっとく!再生可能エネルギー」)

 

また、賦課金のみならず従来から活用されてきた化石燃料を使用する発電のコストも増大し、さらにその間の増税も加わったことで、固定価格買取制度が始まって以来、ドイツ国民に課せられる負担金は大きくなっていきました。

 

さらに、電力を大量消費する企業に対しては賦課金の減免措置も導入されて、国民に課せられる負担と、エネルギー消費量が多い企業ほどメリットがもたらされる不公平感から、ドイツ国民にとって大きな不満要素となりました。

 

 

ドイツにおける固定価格買取制度の見直し

上記のように、ドイツの固定価格買取制度の運用にて様々な問題が発生するようになり、そのことを受けて2012年には同制度の修正法案が成立しました。そして2014年には制度の見直しが行われました。

 

見直しの主な方針としては、競争入札制度を導入することや、売電の市場取引への移行などが盛り込まれており、総じて、再生可能エネルギーの買い取り価格をどのように決定するのかがポイントのように見えます。

 

今後は制度の修正案が具体化されることで、再生可能エネルギーの活用と国民の負担額がより最適化されることが望まれています。

 

 

ドイツで導入されたFIPとは

ドイツではFIT(固定価格買取制度)とFIP(市場プレミアム制度)が導入されています。このFIPとは電力事業者が直接市場で電力を販売する「Feed-in-Premium」という入札方式の略です。
 
FIP導入によって電力を買い取る企業の負担だけではなく、電気料金も下がるため国民の負担も減少することが期待でき、ドイツをはじめとするヨーロッパ諸国では導入や検討が進められています。
 
この制度のメリットとして考えられるのは競争原理を取り込むことによって、独占状態から脱却することができるため価格競争が起こり、その結果として電気料金が値下げされることです。
 
しかし、入札という方式にはいくつかのデメリットも付随するようです。すでにドイツではこの制度の施行が始まっていますが、実際には買取価格が下がらなかった、市民や中小企業の参入が難しくなり大きく力のある企業だけに有利な状況が生まれてしまう等の課題が指摘されています。
 
今後のドイツの動きに注目したいところですね。

 

まとめ

今回は、再生可能エネルギー固定価格買取制度の先駆けであるドイツの例を確認しました。日本の固定価格買取制度は今後もドイツの事例を参考に制度改革が行われるでしょう。したがって、私達が今後も再生可能エネルギーを納得して活用するためには、制度改革の参考事例となるドイツのケースを理解しておくことが有用であると思われます。

 

(参考)

大島堅一『再生可能エネルギー普及に関するドイツの経験-電力買い取り補償制の枠組みと実際-』

経済産業省資源エネルギー庁『欧州の固定価格買取制度について』

2016/11/01

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