暖房、キッチン、給湯など、ご家庭で熱を活用する部分は主にプロパンガスや都市ガスの活用が長らく続きましたが、現在では全てを電気によって熱エネルギーを得るタイプの住宅も増えてきました。一般的には、この住宅をオール電化と言います。
それがオール電化の住宅です。
これまでテレビCM等で盛んに宣伝広告されてきたこともあり、オール電化住宅は多くの家庭の注目を集めつつありましたが、2011年の東日本大震災の発生の影響で縮小傾向が続きました。
現在では、震災前の活況を取り戻しつつ、普及が広がってきています。特に、地方の一軒家では、太陽光パネルの取り付けにより、自宅の電気をすべて太陽光でまかなえるようになり、積極的に導入されています。逆に、関東や都心などでは、分譲マンションなどが多く、地方に比べれば導入のスピードが遅いようです。
しかし、2016年からの電力小売全面自由化によってオール電化に関する新しい動向が見られるとも推測されます。
そこでこの記事では、オール電化の住宅に関する基本的な知識を整理してみたいと思います。オール電化の設備や導入する際の注意事項など幅広く、特徴を紹介します。これからオール電化を検討する人は、ぜひ参考にしてみてください。
オール電化というキーワードがよく聞かれると思いますが、そもそも、オール電化住宅とはどのような特徴を持った住宅でしょうか。
一言で言えば、「家庭の熱源を全て電力で賄う住宅」と表現できるでしょう。今まで使っていた灯油を使ったヒーターやガスコンロなどを、電気製品へと置き換えます。
具体的に、以下の設備が導入された住宅になります。それぞれの機器と、特徴も合わせて紹介します。
IHクッキングヒーターはオール電化の最も特徴的な設備と言えます。
電磁誘導を利用して金属製鍋を熱する調理器具であり、これまでのガスコンロのように火を使用した方式とは一線を画します。
燃焼系器具とは異なるため部屋の空気が汚れにくく、また火そのものを発しないため安全性も高いと言えます。
特に、ガスコンロから切り替える人は、掃除のしやすさから選ぶ場合があります。ガスコンロの掃除は、とても大変なものです。鍋やフライパンを火にかける時にのせるゴトクは、汚れが中々とれませんし、長年使っていくと汚れが目立ってきます。IHクッキングヒーターなら、鍋をのせるゴトクが必要ありません。そのまま鍋やフライパンをのせるだけで加熱できます。もし、何かこぼれたとしても、拭き取るだけで大丈夫です。
ただし、IHクッキングヒーターに使える鍋の材質は限られることがデメリットです。電気を流して鍋やフライパンを温めているため、電気を通さない材質のものは使うことができません。使える材質としては、鉄やステンレスでできたものだけです。使えない材質としては、アルミや銅などが挙げられます。ガスコンロの時は、アルミの鍋などを使った経験があると思いますが、オール電化にするとアルミの鍋は諦めなければいけません。
どの鍋が使えるかは、鍋やフライパンなどに説明書きがされていますので、購入する時はそのマークを見て使えるか判断しましょう。
また、火力が弱くなるという人もいますが、最近では火力の強いものも出ていますので、業者に相談してみてください。
火の力は使わず、電気の力でお湯を沸かす器具です。ガスを使ってお湯を沸かしていた人からすれば、想像しにくいものかもしれません。
ガスの場合は、お風呂の蛇口をひねればお湯を沸かして、すぐにお湯が出てきますよね?オール電化の場合、ガスとは違いすぐにお湯を沸かすことができません。そのため、考えられたのが電気温水器です。
電気温水器は、深夜にお湯を沸かしてタンクにお湯を貯めておきます。イメージとしては、電気ポットでお湯を沸かして、そのまま温めておく装置といえばイメージしやすいでしょうか。深夜にお湯を沸かすのにも理由があり、電気代を抑えることができます。
電気代は、朝晩、昼間、夜で1kwあたりの値段が違い、一番電気が使われていない深夜帯だと、昼間の半分以上の値段で電気を使うことができます。この時間帯を狙って、温水器でお湯を沸かしているのです。
ただ、温めたお湯を貯めているだけですので、使いすぎればお湯がなくなってしまうというデメリットがあります。お湯がなくなったら、お湯が温まるまで待たなくてはいけません。小さなアパートや、家賃の安いアパートの場合、この温水器のタンクが小さく、一回シャワーを浴びるだけで全てのお湯がなくなってしまう場合もあります。
次に述べるエコキュートも同様に電気給湯器ですが、両者の違いは価格です。
電気温水器の方が安い給湯器になります。
こちらも電気給湯器ですが、ヒートポンプ技術を応用して空気中の熱を活用することが、電気温水器との違いです。わずかな電気で、湯を作り出すことができるため効率性に優れます。
ただ、デメリットは変わらずお湯を温めておく量に限界があるため、使いすぎると水が足りなくなることがあります。日本人はお風呂にも入りますし、シャワーも浴びます。大家族になればなるほどお湯を使いますので、購入する時はどの程度お湯をためておけるのか注意が必要です。
住宅の床下に熱源を備えることで、床を暖めるのみならず、床から放射される熱により部屋全体を温めるシステムです。エコキュートと組み合わせて導入されるケースが多く見られます。冬などは、底冷えするので家を建てる時に導入する人が増えてきています。
床暖房には温水式と電気式があり、それぞれ初期費用とランニングコストが異なります。昔は、ヒーターなどを使った電気式が一般的でしたが、現在では温水式が増えてきています。温水式は、床下に温めた水を流すことで、温水ならではの体にしみわたる温もりを作り出しています。お湯を温める原理は、エコキュートと同じで、空気中の熱を機械に取り入れ水を温めるので、電気代の節約になります。
そのため、温水式は、初期費用は電気式よりも高いものの、ランニングコストを抑えることができます。
オール電化住宅は経済性にメリットがあるという声や宣伝を聞かれることがあると思いますが、実際のところ本当に経済的なのでしょうか?
電気温水器やエコキュートは割安である深夜帯の電気を活用してお湯を沸かすため、その分、電気代は安いと言えます。特に、エコキュートに関していえば、空気中の熱を使いお湯を使うため、電気温水器よりもさらにお得です。
また、各電力会社にはオール電化向けの料金プランも用意されているため、それらプランを活用することでさらなる経済性を求めることが出来るでしょう。
最近では、太陽光パネルも非常に普及してきました。家で発電した電気のみで、家のすべての電気をまかなえるようになってきています。しかも、電力小売全面自由化により電気の価格競争がおき、これから徐々に電気代が下がっていくでしょう。
総じて、オール電化の住宅は、電気料金プランを適切に選択する等により、経済的な住宅ということが出来ます。
オール電化住宅は、電気料金プランを適切に選択することが大切とお伝えしましたが、具体的に言うと電気を使う時間帯を見極める必要があります。電気料金は、朝晩、昼間、深夜で値段が大きく違いますが、昼間に電気を使いすぎるとメリットどころか、ガスの頃よりも費用がかかってしまう場合があります。
例えば、深夜に沸かしてお湯を貯めている温水器やエコキュートですが、朝にお風呂に入る人であれば、深夜に沸かしたお湯を朝に使い切ってしまう可能性があります。そうなると、その日の夜にお風呂に入りたくても入れなくなるかもしれません。昼間にもお湯を沸かすことができますが、お伝えした通り、昼間の電気代は、深夜の2倍以上です。
このように、お湯を沸かす時間のことや、電気を使う時間のことを考えて生活する必要があるため、生活を電気の使用時間に合わせる必要が出てきます。逆に、習慣的に生活できる人は、オール電化にすれば大きなメリットを得ることができるかもしれません。
オール電化の住宅が注目されてきた背景には、ガス等と比べて安全性が高く、またご家庭で使う熱源の料金を一本化できて家計上の管理のしやすいこと、さらに深夜帯の電気を活用できることから割安な光熱費に抑えることができるなど、様々なメリットが理解されてきたからです。
一方で、2011年に発生した東日本大震災の影響で、電気料金の値上げが各地で相次ぎ、また自然災害時に大規模停電が発生した時のデメリットも目の当たりにするようになりました。
そのため、震災後はオール電化住宅の普及の落ち込みが見られました。しかし、今後は電力小売全面自由化や太陽光パネルの普及により、各社のオール電化普及のための宣伝も行われるでしょう。なぜなら、オール電化住宅には、ガスにはないメリットが多くあるからです。
また、スマートメーターを活用した効率的な電力供給も可能になることが予測され、電気料金体系も今後は多様なものが展開されるでしょう。
このように様々な変化が見られる昨今の電力事情において、オール電化の住宅は経済性という面からも今後さらに注目されるようになると思われます。
2017/03/01